オリジナル【亡くなって、おったまげるな。】物語 その8(最終話)

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閻魔大王に会うと「ワシの目的は終わったので、これから娑婆に戻る。閻魔大王、お邪魔したのう。」と金比羅の神様が言うと、「金比羅の神様、目的を果たされて何よりです。また、御出で下さい。」と閻魔大王が笑いながら言って見送ってくれた。

金比羅の神様が「金鯰よ!娑婆に戻るぞ。」と言われたので、金鯰は金比羅の神様と船主を乗せながら館を出て、空に向かって飛び始めた。

三途の川を通り越してしばらく飛んでいると、金比羅の神様は自分の杖を振りながら「えい!」と念じられると、飛んでいた目の前が「ピカッ!」と光り、すると、塩川の街並みが下に見えた。

そして船主の家が見えてくると、金比羅に神様は「それじゃ!船主、約束通り戻ってやるぞ。」と言われて、金鯰は金比羅の神様と船主を乗せて、船主の家の中に入って行った。

お金を着物で隠して動かないでいる船主の前に戻ると、金比羅の神様は手を船主に触れながら「えい!」と念じられた。

すると、船主は羽織っている着物で数えていたお金を隠して、動かないでいる自分の体に戻った。

金鯰の上に乗った金比羅の神様は無かったが、「亡くなって、おったまげるなよ。ゆめゆめ疑う事なかれ。」という声なき声が、聞こえてきたので、船主は上の方を見つめながらしばらく考え込んでいた。

次の日の朝、船主は金比羅神社に行って、手を合わせながら何やら「ブツブツ。」と言いながら、しばらくお参りをしていた。

街の川港に一隻の廻来船が着くと、船主は廻来船の上にいる水夫たちに「無事着いて良かった。 急がないで良いから、怪我をしないように廻来船の積み荷の下ろしをしておくれ。」と船主が言って来たので、水夫たちは『船主いつもなら、大声を張り上げて怒鳴っていたのに、どうしちまったんだろう?』と、水夫たちは困惑したような顔をしながら、廻来船の積み荷下ろしを始めた。

廻来船の積み荷下ろしを、今まで一度もしたことがない船主なのだが、船主は廻来船に乗り込んで来て、水夫たちと一緒に廻来船の積み荷下ろしを始めた。

水夫たちは自分たちと一緒に、積み荷下ろしをする船主に益々困惑していた。

廻来船の積み荷を全て下ろし終えると、水夫たち一人一人に船主は「ご苦労さん。」と声を掛けながら、手間賃を手渡した。

そして、手間賃を渡し終えると船主は水夫に、「ワシに前借りをしている借金は棒引きするから、その分一生懸命に働いておくれ。頼んだよ!」と、思ってもみなかった言葉を言った。

水夫たちは船主の変貌に疑心暗鬼でいたが、水夫の中には涙を流しながら「ありがとうございます。」と、船主に感謝を言う水夫もいた。

その後も、船主は水夫たちに優しい言葉や労わってくれたり、一緒に廻来船の積み荷下ろしをしてくれるので、水夫の方からも「船主さん、牡丹餅たくさん作ったので、持ってきたので食べてください。」「魚を捕ったので、食べてください。」「干し柿が上手くできたので、食べてください。」「うちのやつが、船主さんの腹巻をこしらえたんで、使ってください。」と、船主になんやかんやと持ってきて来てくれるようになった。

水夫たちが親しく接するようになってくれたので、船主は水夫たちが心から愛おしく思うようになり、船主も水夫たちも笑いや笑顔が多くなり、船主と水夫たちとの絆が深く強くなった。

船主の水運業も益々商売繁盛し、塩川の街でも指折り水運業になり、金比羅神社に船主も水夫たちと一緒に、船海安全の祈願のお参りを頻繁にしていた。

そんな、船主や水夫たちの様子を金鯰の上に乗りながら、金比羅の神様は微笑まれながらご覧になられていられたとさ。

めでたし、めでたし、おしまい。

作者 ©鈴木孝夫 2019年 (許可なしに転載、複製することを禁じます)

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この記事を書いた人

骨皮スジ夫

骨皮スジ夫

金鯰物語の作者。塩川町出身、塩川町在住。発明家としての顔も持っている。