オリジナル「らいさま」物語

岩代の国の塩川の街は、繁栄している川港の中心地の街で、水運の宿駅として大きな廻来船が毎日往来していた。

港に近いところに船海安全を守る舟運の神、金比羅神社が祀つられていて、金比羅神社には雷神様も祀られていた。

祀られている雷神様を街の人々は「らいさま」と呼んでいた。

この街は水運の基地でもあったので、このらいさまは雨を降らせて廻来船が運航出来るようにしてくれていた。

「らいさまの助太刀だ。」

夜、街の方々が明りが全くない真っ暗な道を歩いていると、らいさまは稲光で道を明るくしてくれた。

「らいさまの稲光の提灯だ。」

火種がなくて困っていると、稲光で火種を作ってくれたりもしてくれた。

「らいさまの稲光の灯火だ。」

夫婦喧嘩をしていると、らいさまは「ゴロゴロ!ドカン!」と大きな雷鳴で怖がらせて、夫婦喧嘩をやめさせていた。

「らいさまの雷鳴の時の氏神だ。」

子供たちが日が暮れても帰らないでいると、「ゴロゴロ!ドカン!」と大きな雷鳴で怖がらせて、子供たちを家に帰させていた。

「らいさまの雷鳴なるから帰ろうだ。」

山賊や窃盗団がこの街に近付いてくると、らいさまは凄まじい稲光と雷鳴で、山賊や窃盗団を追い払ってくれていた。

「らいさまのお奉行様だ。」

らいさまがなんやかんと街の人々に手助けをしていたのは、らいさまはこの街の人々が大好きだったからだ。

そんならいさまの様子を、金比羅の神様は微笑まれながらご覧になられておられていた。

そんなある日のことだが、諸国を巡っている雷神がこの街にやって来た。

諸国を巡っている雷神は、らいさまのしていることを見て、こう言った。

「人々を恐れおののかせなければいけないのに、雷神道からすると間違ったことをしている、威厳が全くない落ちこぼれの雷神だ。何て腑抜けたことをしてやがる。何が“らいさま”だ。」

そして諸国を巡っている雷神は、らいさまに雷神道やらを知らしめるために、「ゴロゴロ!ドカン!ザァザァ!」と地が揺さぶられる大きな雷鳴を立て続けに鳴らし、発光で目がつぶれるまぶしい稲光をあちらこちらに落としまくり、桶の水をひっくり返したような雷雨を降らし始めた。

すると、街の人々は雷鳴に身体をわなわな震わせ、稲光に悲鳴をあげながら逃げまどい、すさまじい雷雨に動けないので困って、ただひたすら手を合わせながら「らいさま!らいさま!」と、悲痛の声をあげながら拝んでいた。

らいさまはそんな街の人々を見て、諸国を巡っている雷神に「やめろ!」と言いながら体当たりをして、やめさせた。

不意打ちを食らった諸国を巡っている雷神は、「痛い!何をしやがる。」言って、らいさまを睨み付けた。

らいさまと諸国を巡っている雷神との睨み合いがしばらく続いた。

そしてらいさまは「お前、直ぐにこの街から出て行け。」と怒りながら言うと、「嫌だ。」と諸国を巡っている雷神が言い返した。

さらに「じゃ、俺と戦え!お前が勝ったら、この街から出てってやる。俺が勝ったらばこの街からお前が出て行け。」と諸国を巡っている雷神が言った。

らいさまは「わかった。望むところだ。」と言って、決着の戦いをすることになった。

成り行きをジッとご覧になられていた金比羅の神様が、「よし!その戦いわしが見届けてやろう。この場所での戦いは、街の人々に災難を招いてしまうので、決着の戦いの場所を天上界で行うのが良かろう。ついて参れ。」と言うと、金比羅の神様は金鯰に乗って天上界に向かわれ、らいさまと諸国を巡っている雷神もついて行った。

天上界に着くと、らいさまは太鼓やバチやひしゃくや自分を乗せている雲に、手で撫でながら「よろしく頼む。」と声掛けを始めた。

らいさまがしていることをみて、諸国を巡っている雷神は「太鼓やバチやひしゃくや雲は、ただの道具に過ぎないのに、馬鹿なことをしてやがる。」と言いながら鼻で笑っていた。

金比羅の神様は、「この戦いは、らいさまの方が勝つだろう・・・。」とつぶやかれた。

らいさまと諸国を巡っている雷神の、お互いが繰り出す雷鳴稲光雷雨での決着の戦いが開始された。

らいさまの乗っている雲は、諸国を巡っている雷神が繰り出す雷鳴稲光雷雨をひらりとかわしながら、そして太鼓やバチやひしゃくで繰り出す雷鳴稲光雷雨を、諸国を巡っている雷神に百発百中命中させていた。

らいさまの乗っている雲や太鼓やバチやひしゃく自身が、まるで生きているかの様に意志が働いての勝負だったので、勝負は圧勝に終わった。

諸国を巡っている雷神は雷鳴稲光雷雨を受けて、乗っていた雲と共に下界に落ちて行って、金比羅神社の御神木の銀杏の木に、「ゴロゴロ!ドカン!」と言う凄まじい音と共に落ちてしまった。

勝負の決着が着いたので、金比羅の神様は金鯰に乗り、らいさまも一緒に、諸国を巡っている雷神が落ちた金比羅神社の御神木の銀杏の木に向かった。

諸国を巡っている雷神が落ちた金比羅神社の御神木の銀杏の木の中は焼け焦げていて、御神木の銀杏の木の外に諸国を巡っている雷神は座り込んでいた。

金比羅の神様は、諸国を巡っている雷神に「お前は残念ながら、神の通力のことをわかっていなかったようじゃな。らいさまは太鼓やバチやひしゃくや自分を乗せている雲に、手で撫でながら『よろしく頼む。』と声掛けていたから、神の通力が宿り、そして神の通力が働いておったから勝負にならなかったのじゃ。お前は「ただの道具に過ぎないのに、馬鹿なことをしてやがる。」と鼻で笑っておっただろう。らいさまは太鼓やバチやひしゃくや雲、そして街の人々に限らず、全てのものに“愛”という想いが強くあるから、神の通力と神の加勢を賜ることが出来るのじゃ。お前も神の通力と神の加勢の事を心に深く刻んで、精進をして欲しい。」とコンコンと諭した。

そして諸国を巡っている雷神は、金比羅の神様とらいさまに一礼を深々として、この街を出て行ったとさ。

おしまい。 

作者 ©鈴木孝夫 2021年 (許可なしに転載、複製することを禁じます)

鈴木孝夫

金比羅神社の御神木の銀杏の木には、雷神が落ちた焼け跡が今も残っています。

下の写真は、秋の御神木です。

この記事を書いた人

鈴木孝夫

金鯰物語の作者。塩川町出身、塩川町在住。発明家としての顔も持っている。