オリジナル「生(せい)をいただく」物語

鯰たちが川で泳いでいると、舟が近付いてきたと思ったらば「バサァー」という音と共に、網が下りて来て一緒に泳いでいた鯰たちが、数匹網に掛かって引き上げられ捕まってしまった。

その後も何度も何度も、舟の上から網が下りて来て、鯰たちが次々と網に掛かって引き上げられていく中を、必死で逃げまどい、そしてやっとの思いで巣穴に逃げ込んで命拾いをした鯰が、捕まって行く仲間の鯰たちのことを思い出しながら「人間のやつらやりやがった。俺たちの仲間を捕まえて殺して食べやがるんだ。ちくしょう!」と嘆きながら悔しがって泣いた。

そんな命拾いをした鯰が、金鯰に「何で人間の野郎たちは、俺たちを捕まえて殺して食べるんだ。人間たちが憎い。」と泣きながら切々と訴えて来たので、金鯰は金比羅の神様のお供をしている時に、命拾いをした鯰から聞いた出来事を金比羅の神様に切々と訴えて、「どうか、私たちを助けてください。」とおすがりをした。

金比羅の神様はしばし切なそうにして悩んでおられたが、「人間たちがお前の仲間の鯰たちを捕まえて、殺して食べてしまうことは、本当に気の毒なとてもかわいそうなことなので、どうにかしてやりたいが、ワシは何も出来んのじゃ。

金鯰よ、お前や仲間の鯰たちだって魚たちを食べるだろう。食べないと生きていけないから魚たちを食べるはずだ。

人間たちもお前や仲間の鯰たちもそうだが、“生きるために生あるものを頂いているから生きていける”。もしワシがかわいそうだと思って、お前や仲間の鯰たちが食べようとしている魚たちを助けたらば、お前や仲間の鯰たちは飢えて死んでしまうだろう。

だからワシは何も出来んのじゃ。食べられてしまったお前の仲間の鯰たちや魚たちは、食べた者たちの血肉の一部という新たな姿になって、その者と共に生きていると、ワシはそう考えておる。お前や仲間の鯰たちが魚たちを捕食する時に、“生きるために生あるものを頂いているから生きていける”、という事を忘れてはならない。神社には犠牲になってくれた者たちを供養する供養塔がある。

実はのう、食べられてしまったお前の仲間の鯰たちや魚たちは、目には見えない魂という姿となって、あの世の天国にある“幸せの川”と言われていうところに行って泳いでおる。

そしてまたいづれ、この世に戻って来ては、お前の仲間の鯰たちや魚たちそれぞれの稚魚となって、誕生するという廻りをしておるのじゃよ。」と話された。

金比羅の神様は懐から手鏡を出されて、「この手鏡は念じると見たいと思うものを見れる手鏡で、特別にお前に見せてしんぜよう。」と言うと、金比羅の神様は手鏡に「えいい。」と念じられて、手鏡を金鯰に見せられた。

金鯰が手鏡を覗くと、今まで一度も見たことがないとても明るい川が映し出されていて、川の水は透き通っていて、川底にはキラキラ光る宝石が敷きつめられて輝いている。

両側の土手にはとても綺麗な、色とりどりの花が咲き乱れている花畑がとこまでも続き、空では天女たちが飛び回っていて、川には前に人間に捕まえられて殺されて食べられてしまった、仲間の鯰たちが元気に仲良く泳いでいる姿が見えていた。

「人間たちに捕食された仲間の鯰たちの、『仲間の鯰たちや家族の鯰たちと、もっともっと生きていたかった。』という、無念や辛さや苦しさを、あの世の天国にある“幸せの川”では、癒されて忘れさせてくれる。

それと肉身がないので魚たちの捕食が必要ないところが“幸せの川”なのじゃ。」と神様が話された。

しばらく手鏡を覗いていると、金比羅の神様は手鏡にまた「えいい。」と念じられると、先程とは全く違う薄暗い川の風景が映し出されてた。その川は血の色で真っ赤で、両側の土手には草木は生えておらず、どことなく焼けたような黒色のゴツゴツとした岩肌がとこまでも続く。

その川には鯰たちが泳いでいるが、鯰たちは川の色に染められていて真っ赤、そして鬼がやって来ては泳いでいる鯰たちを、鬼が金棒で力任せに突いたり殴ったりしているので、痛いらしく鯰たちは必死で逃げ惑いながら泳いでいて、痛々しくて見ているのがとても辛くなってきた。

「手鏡に見えているのは地獄にある“苦痛の川”と言われる川の風景で、その川で泳いでいる鯰たちは、生きている時に生きるためじゃない、遊びで魚をさんざん殺戮をした鯰たちが亡くなってから、その報いを受ける為にあの世の地獄にある“苦痛の川”というところじゃ。

殺戮をした魚たちか殺された時の痛みや苦しさや、「もっと生きていたかった。」という無念や辛さを、たっぷりと味わらねばならぬ為におらねばならない鯰たちなのじゃよ。あと、苦しい辛いことがあって自ら命を絶つという行為をすると、地獄にある“苦痛の川”よりもっともっと苦しい辛い場所行きになる。

あの世の天国と言うところは、四六時中楽しくって笑っていられるところだが、反対に地獄と言うところは凄く辛くて苦しくって、四六時中泣いていなければいけない大変なところだ。

お前の仲間の鯰たちを食べている人間たちも言えることで、人間の中に「地獄極楽金次第」何て言う輩がおるようだが、全くのでたらめで、生きている時の行いによって、亡くなるとあの世の天国か?地獄か?どちらかへ行かなければならない。

生きている時に良い行いをたくさんすると、亡くなると天国に行けるが、生きている時に悪い行いをたくさんすると、亡くなると地獄へ行かなければいけないので、肝に銘じていて欲しい。

実はあの世の天国や地獄は何層もあって、とても複雑で奥が深いところなのじゃが、そのことは今度またいずれ、詳しく教えてやろうと思うておる。お前から仲間の鯰たちにワシが話したことを伝えてほしい。」と、金比羅の神様がお話しを終えられた。

金比羅の神様のお話しを聞いた金鯰はわかってくれたらしく、その後は笑顔で金比羅の神様のお供をしていた。そして金鯰は神様がお話しをして下さったことを、仲間の鯰たちにも伝えたとさ。

おしまい。

作者 ©鈴木孝夫 2018年 (許可なしに転載、複製することを禁じます)

この記事を書いた人

鈴木孝夫

金鯰物語の作者。塩川町出身、塩川町在住。発明家としての顔も持っている。