オリジナル「欲は身を失う」物語

清らかな川の流れには川の源流が大切なので、金比羅の神様は、川の源流の山の森を見に金比羅の神様は金鯰の上に乗って巡行に行ってみると、この山の森の木を伐って炭焼きをしている夫婦がいた。

金比羅の神様は白髭の老人に変化身されて、その夫婦の前に現れ、こう告げた。

「ワシは金比羅の神だが、川の流れには山の森が重要なので、お前たちに守って欲しいことがある。炭焼きで木を伐ったらば、伐った木の本数を必ず植林をしてくれ、それを必ず守ってくれ。」

夫婦は、現れた白髭の老人があまりにも神々しい方だったので、金比羅の神様のお告げと信じて、伐った木の本数の木を必ず植林をしていた。

山の森の木があるから炭焼きが出来ると、夫婦は感謝をしながら丹精込めて炭を作っていたので、夫婦の作った炭は、とても火持ちのする良い炭だと、里ではたいそうな評判になった。

ある日のことだが、夫婦の作った炭の評判を知った行商人が、夫婦のところに訪ねて来て、炭を大量に買いたと言って来た。

この夫婦は炭を大量には作れないのでと断ると、行商人は炭を高く買うからと、夫婦の目の前にお金をジャラジャラと山盛りに出してお願いをしてきたが、大量には炭を作れないので夫婦はきっぱりと断った。

諦め切れない行商人は、次の日にまた、徳利に入っている酒と綺麗な着物を持参して、この夫婦のところにやって来た。

やって来た行商人の姿を見た炭焼きの旦那さんは、「何度来ても炭は売らんぞ。」と断ると、行商人は「とてもおいしいお酒を旦那さんに呑んでもらいたくって来ました。」と言って、行商人は徳利の酒を湯飲みにつぎ、旦那さんに「とてもおいしい酒なので、一口どうぞ。」とお酒を進めた。

お酒が嫌いでなかった旦那さんは、湯飲みに入っている酒の匂いに誘われるように、お酒を呑んでしまった。

酒を呑むと、今まで味わったことがないとても美味しい酒だったので、行商人に「もう一口、もう一口どうぞ。」と勧められるままに、続けざまについつい酒を呑んでしまった。

そして今度は、行商人は着物をひらひら見せながら、奥さんに着物を羽織らせて、「奥さん、とても似合ってますよ。」と言った。

羽織られた着物は今まで見たことがないとても綺麗なものだったので、奥さんはうっとりとしてしまった。

そんな夫婦の様子を見て、行商人は「旦那さん、炭の売った金で、お酒がもっともっと呑めますよ。」「炭を売ってくれると奥さん、着物どころかいろいろな物が買えますよ。」と巧みに話し、夫婦は大量に炭を売る約束をしてしまった。

夫婦は行商人と約束をしてしまったものだから、大量の炭を作らなければいけなくなり、山の森の木をドンドン伐らなければいけなくなった。

金比羅の神様のお告げの「伐った木の本数を必ず植林をしてくれ。」の約束が出来なくなり、山には森がなくなりはげ山にまでしてしまった。

そんなある日、そんなはげ山に大雨が降ったものだから、大量に降った雨で土砂崩れが起きて、炭焼きをしていた場所と住んでいた家もろともに、夫婦も土砂崩れに巻き込まれて流されてしまった。

夫婦は土砂に流されながら「助けてくれ。助けてくれ。」と必死で叫び声を上げていると、金鯰に乗った金比羅の神様がやって来て、土砂崩れで流されている夫婦を救い出し、そして、金比羅の神様は金鯰の体で止めさせて、土砂崩れは治まった。

救いだされた夫婦は、手を合わせ深々と頭を下げながら金比羅の神様にひざまずき「ありがとうございます。ありがとうございます。」と、泣きじゃくりながら救い出してくれたお礼を言っていた。

金比羅の神様は、ひざまずき泣きじゃくりながら救い出してくれたお礼を言っている夫婦の姿を見ている内に、夫婦を不憫に思われた。

約束事を守らなかった夫婦ではあるが、もう一度やり直しの機会を与えてやろうと思われ、金比羅の神様は夫婦に「私との約束事を必ず守ると誓うのであれば、お前たち夫婦にやり直しの機会を与えてやろう。」と告げた。

夫婦は金比羅の神様に更に頭を深々と下げて「お願いいたします。お願いいたします。」と必死に言ったので、神様は杖を地面に突き刺して唱え事をしながら念を送り始めた。

すると時が逆戻りをし始め、土砂崩れしてしまった山に森が復活し、夫婦が始めて金比羅の神様とあった時の元の森の豊かな山に戻ってしまった。

夫婦は金比羅の神様に「やり直しの機会をお与えいただき、ありがとうございます。本当に二度と金比羅の神様とのお約束は破りません。」と強く誓った。

金比羅の神様は夫婦に「ワシは見ておるからの、よろしく頼むぞよ。」と告げて姿を消された。

それから夫婦は、炭焼きで木を伐ったらば伐った木の本数を必ず植林をして、金比羅の神様との約束を守り山に金比羅神社を建立し、金比羅の神様と山の恩恵に感謝して日々お参りをし、炭焼きを続けて末永く幸せに暮らした。

金比羅の神様は金鯰の上に乗って、この夫婦がいる山に巡行に行った際は、夫婦が建立してくれた神社で一休みしながら、金比羅の神様との約束を守り、夫婦で炭焼きをしている姿を、金比羅の神様は微笑まれながら、見守られておられたとさ。

おしまい。

作者 ©鈴木孝夫 2018年 (許可なしに転載、複製することを禁じます)

この記事を書いた人

骨皮スジ夫

骨皮スジ夫

金鯰物語の作者。塩川町出身、塩川町在住。発明家としての顔も持っている。