オリジナル「雲に乗れたよ!」物語

「ちい。」という名の5歳の女の子が、お母さんと二人で散歩をしていた。

ちいが空を見上げながら大きな入道雲を指差して、「お母さん!お母さん!ちい、お空のあの雲に乗ってみたい。」と言った。

お母さんもお空を見上げながら、「そうね!お母さんもあの雲に乗ってみたいけど、鳥さんのように飛べたらあの雲まで飛んで行って乗れるんだけど、ちいは飛べないから、あの雲に乗るのは難しいね。」とお母さんが答えた。

「乗ってみたいな。」とちいは、残念そうにポツッと言ったが、ちいの雲に乗りたい思いはますます募っていった。

そんなやり取りがあった数日後、朝から降り続いていた雨が、昼過ぎは止んで晴れだしてきた。

ちいは雨が降っている間、家の中に閉じ込められていたもんだから、外に出たくて、雨がやむのを窓から外を眺めていた。

雨がやんで晴れ出すと、「あー!雲だ!」と叫んで、ちいはお庭に飛び出して行った。

お庭には水溜まりがたくさん出来ていて、水溜まりの水面に雲が映っていたのが見えたからだ。

ちいは、水溜まりに入って足をバシャバシャし始めた。

ちいが水溜まりで足をバシャバシャしたもんだから、水溜まりが濁ってきて、水面に映っていた雲が見えなくなってしまった。

ちいは「雲が見えなくなった。」と言って周りを見渡すと、別の水溜まりの水面にも雲が映っていたもんだから、ちいは「あ!雲だ。」と叫んでは、また、その水溜まりに入って、次々と庭中に出来た水溜まりで足をバシャバシャしていた。

家の中にいなくなったちいを探していたお母さんが、外の水溜まりで足をバシャバシャしているちいを見つけて、「ちい、なにしているの?」と声を掛けた。

「お母さん!お母さん!ちいは雲に乗れたよ。」と、ちいは嬉しそうに笑いながら言った。

ちいはよほど嬉しかったようで、自分が雲に乗っている絵をクレヨンで描いて、お母さんに見せた。

お母さんはちいの描いた絵を見ながら、「ちい、雲に乗れて良かったね。」と微笑みながら、ちいの頭をなでていた。

その晩、ちいが寝ると夢の中に、金鯰の上に乗っている、白髭のお爺さんの姿になった金比羅の神様が現れた。

金比羅の神様が手招きをして、おいでおいでをしていたので、金比羅の神様が乗っている金鯰にちいも乗った。

そして、金鯰はちいと金比羅の神様を乗せると空を飛び始めた。

大きな入道雲まで飛んで行くと、金比羅の神様は「ヒョイ!」とその入道雲の上に飛び乗ったので、ちいも入道雲の上に飛び乗った。

ちいは飛び乗った入道雲の上で、ピョンピョンはねたり走り回ったりしていた。

金比羅の神様は「ちい、ワシが雲を造ってやるぞ!」と言うと、金比羅の神様が杖を振って「エイ!」と念じられると、ウサギとカメやなまずの形の雲が出来た。

金比羅の神様が造った雲を見て、ちいは「うわ!」と叫んで、「ねこさんといぬさんとうまさんも造って!」とちいがお願いすると、金比羅の神様は「よし!造ってやるぞ!」と言って、「エイ!」と念じられると、ねこといぬとうまの形の雲を造られた。

金比羅の神様が造ってくれた雲にも、ちいは次々と飛び乗ってはピョンピョンしたり、走り回ったりしていた。

そんな夢をちいは見たとさ。

おしまい。

作者 ©鈴木孝夫 2021年 (許可なしに転載、複製することを禁じます)

この記事を書いた人

鈴木孝夫

金鯰物語の作者。塩川町出身、塩川町在住。発明家としての顔も持っている。